膝の関節鏡視下手術とは
これまで膝関節の手術は皮膚を大きく切開する必要があり、患部とは関係のない筋肉などを損傷せざるを得ませんでした。
近年、関節鏡手術が発展し筋肉を傷めることなく高度な手術が1センチメートル程度の切開で行えるようになりました。
傷が小さいためほとんど出血が無く、従来の方法と比べ痛みが少なく術後のリハビリがスムーズに行えるようになり患者さんの負担も小さくなっています。
前十字靱帯再建術
前十字靱帯とは膝関節内の大腿骨と脛骨をつなぐ靱帯であり、スポーツなどの外傷により、前十字靱帯が断裂すると膝関節のグラグラ感や、膝折れなどの不安定感が生じます。
活動性が低い中高年者では保険治療を行いますが、活動性が高い若年者では、不安定なまま放置しておくと、将来的に変形性膝関節症になる可能性が高いため、前十字靱帯再建術を行います。
左: 正常前十字靱帯(矢印)
右: 前十字靱帯が消失している
ハムストリング腱での前十字靱帯2重束再建
当院では、関節鏡視下に膝蓋腱を用いた再建法とハムストリング腱を用いた2重束再建法を症例に応じて行っています。
半月板切除・縫合術
半月板縫合術 断裂半月板を糸で縫合する
半月板は膝関節内の大腿骨と脛骨の間にあるクッションとスタビライザーの働きをする軟骨であり、スポーツなどの外傷や、加齢変化による変性によって損傷が生じることがあります。半月板が損傷されると、曲げ伸ばし時の痛みや、引っ掛かり感が生じたり、関節液がたまったりすることもあります。保存治療を行っても症状が持続する場合、当院では半月板損傷に対して関節鏡視下に半月板の部分切除術もしくは、縫合術を行っています。
全ての手術は関節鏡視下に行われるため術後は翌日から歩行が可能で数日の入院で済みます。縫合した場合は縫合部がしっかり癒合してからスポーツ復帰となります。
変形性膝関節症に対する手術とは
変形性膝関節症は関節軟骨の老化により生じることが多く、外傷、感染などの後遺症によっても生じることがあります。関節軟骨が弾力性を失い、軟骨が摩耗し、関節が変形をおこします。初期では立ち上がり時、歩き始めの痛みが生じ、徐々に安静時痛や、膝の伸展制限、内反(もしくは外反)変形が生じてきます。
当院では変形性膝関節症に対し、骨切り術もしくは人工膝関節置換術を行っております。
骨切り術
変形している膝関節のアライメントを整える手術です。
中等度の関節の変形で比較的若年者(40~70代)の方が適応となります。
当院では、全国的に広く行われている高位脛骨骨切り術(HTO)や、長崎大学で考案された脛骨顆外反骨切り術(TCVO)、大腿骨遠位骨切り術(DFO)など、症例に応じて使い分けて行います。
左:術前 点線を骨切りし開大
右:HTO術後 開大部に人工骨を骨移植し、プレートで固定する
左:術前 点線を骨切りし開大
右:TCVO術後 開大部に人工骨を骨移植し、プレートで固定する
人工膝関節置換術(TKA)
重度の関節変形や、比較的高齢者(70代~)の方に対して、行っております。
大腿骨、脛骨の摩耗した関節軟骨を切除し、金属の人工関節に置換する手術です。
関節のアライメントを改善し、不安定性を取り除くことにより、痛みが軽減し歩きやすくなり生活の質の改善が見込めます。
左:術前 重度の内反変形 点線間の骨を切除
右:術後 人工関節置換術後